WILD CAT

(9)


 

  
 ――――帰りついた自分の部屋のドアを開ける時、かなり躊躇った。
 彼女はいないと、いるはずがないと分かっているくせに、頭のどこかで期待している思いがあって。
 暗闇と静寂に迎えられるその孤独感が、たまらなく痛くて・・・・

  

 


 「・・・・・リナ」
 暗い部屋に立ち尽くし、ぽつりとつぶやきが溢れた。
 一晩彼女が過ごした形跡は、跡形もなかった。
 俺と別れてから一度ここに戻って来たのだろう。
 朝、2人で食べたコンビニ弁当の空の容器や使った食器がどこにもなかった。
 最初から何もなかったかのように、綺麗にされた部屋。
 ただ。落しきれなかったのか、ベッドのシーツの端に小さな赤黒い染みが残っていた。
 足に酷い怪我を負って、それで俺を頼ってきた。刑事と泥棒、敵と味方。そんなものは関係無しに。その嬉しい事実と、今ここにいない・・・彼女が消えてしまった残酷な現実。
 それが・・・・胸の痛みを倍増させる。
 今朝まで、確かにここにいて。
 『おやすみ』って言って、『おはよう』って起きて、『お帰り』って出迎えてくれた、その声は。今も脳裏に残っているのに。
 「・・・・残酷な女だよ、お前は・・・」
 リナの形跡が唯一残っていたシーツを握りしめた俺の拳に、小さな水滴が落ちて弾けた。
 もう何年も涙など出なかったのに。
 俺が泣くなんて事、あり得なかったのに。
 出会わなければ忘れたままになっていた、孤独という感情。
 きっと、リナも痛いだろう。
 こんな切なさをずっと1人で耐えてきたのだから。
 あいつは、忘れ去って麻痺していた様々な感情を、俺に蘇らせていた。
 世の中の仕組みに組み込まれ、汚れに流されていた俺に。
 あいつと出会わなければ、きっと今でもこれから先も、与えられる仕事を淡々とこなし何も情熱を抱かずに生きていたに違いない。
 都会のジャングルの中で、よくわからない焦燥感を胸に抱いたまま彷徨っていただろう。
 所詮世の中はこんなものだと悟ったふりをして、ただ無意識に生きて、そして死んでいったに違いない。
 でも、今は違う。
 「俺は、刑事失格だな・・・・でも、俺から逃げられるなんて思うなよ」
 あいつを捕まえる。
 全てはそこからだ。
 涙を乱暴に拭って小さく息を吐く。そして、キッと前を見据え背筋を伸ばした。
 ポケットの中の紙切れがかさっと音を立て、存在を主張する。
 あの2人に書かせた、牙竜組内部の詳しい見取り図。
 下っ端だから組の奥の見取りまではわからなかったようだ。組長室から先はどこに何があるか知らないらしい。
 まぁいい。何もないよりはましだ。
 今すぐに乗り込みたいところだったが、すでに夜があける時間になってしまったためと、多少準備があるために一度家に戻ってきたのだ。
 夕方から降っていた雨は、俺が家に帰りつく頃に止んだ。
 迷いをすべて洗い流されたように、どこかスッキリしている。
 それが嵐の前の静けさだって事は充分すぎるほど感じているが、そこに恐怖感はない。
 机に向かい紙を広げ、少しの間目を閉じ、脳裏に仲間たちの顔を思い浮かべた。
 でも、今の俺には感傷は必要無い。
 思いを振り切り一気にペンを走らせると、少しの間の仮眠を取るべくベッドに潜り込んだ。
 微かにリナの香りが移っている毛布を身体に巻き付けて。
 眠れそうもない短い夜を、目を閉じて、脳裏にリナを思いながら・・・

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

  

 帰りたい――――どこに?

 膝を抱え暗闇の無機質な部屋の中でうずくまっている影が、微かに震えていた。
 どんなに気に入らない場所であろうと、ここにしか帰れる場所はないはずなのに。
 そんなことはもうずっと前からわかってる。親に棄てられた時から、どこにも帰る場所はないんだって嫌になる程思い知っていたはずなのに。
 わかっているからこそ、万が一の可能性に賭けて。あたしの人生を賭けてあいつの思惑に乗ってこの能力を使って、泥棒なんてまねをしてきたのだ。
 ここから出て、自由を手にする為に必要だったから。
 なのに・・・・

  

 


 食いしばった歯の隙間から、くぐもった嗚咽が漏れた。
 静けさに満ちた部屋の中でそれは、嫌になるくらい自分の耳に響く。
 泣く資格はない。
 全部自分の引き起こしてきたことの結果なんだから。
 あそこはあたしの帰る場所じゃない。
 なのに、何故行ってしまったんだろう。
 馴れ合う気はないって言ったのはあたしで、その気持ちは今も変わりないけれど。でも、あいつの側は気持ちがよくて。
 いつの間にか自分が笑ってることに、驚いた。
 あたしの事を真剣に追い掛けてくれて、知りたがって、本気で叱ってくれた。
 熱い、キスを何度もくれた。
 いつものようにあいつにも、最初に記憶を混乱させて、深くかかわり合いにならなければよかったのに、なのに興味を持ったのは自分の罪。
 そして。この静寂、寒さ、胸の痛みが、罰。
 もう・・・・会えない。
 今のままじゃ絶対に会えないから。

  

 


 「・・・・っ」
 漏れそうになる声を必死で飲み込んだ。
 呼びそうになった名前をここの連中に知られることだけは絶対に避けなきゃいけない。
 泣いていることを知られるのはもっと嫌だった。
 ことあるごとに部屋に仕掛けられている監視カメラの機能を能力で麻痺させていても、見回りの人間に見つかっては意味がない。
 でも、涙は溢れてきて、止められない。

 

 

 

 一刻も早く指定された仕事を終わらせて、その報酬を受け取ったら。
 自由を手にしたら。
 その時は・・・・会っても、会いに行っても許されるだろうか・・・・

 

 

 帰りたい――――どこに?
 帰りたい――――どこに?
 帰りたい――――それは・・・・・・

  

  

 ◇◇◇◇◇

  

  

 「ゼルガディスさん。今夜・・・開いてますか?」
 「え?」
 終業時間間際の署内の一角。
 いつも元気いっぱいのアメリアが声をひそめ、微かに頬を染めながら上司のゼルガディスに話し掛けている姿は、まったりとした刺激に満ちている署内で、ほんわかした空間を作っていた。
 分かりやすいアメリアの性格上、ある意味よく見かける風景でもあるので、今さらその2人に改めて注目する者はいない。
 それでもいつになく大胆なアメリアからのお誘いに、ゼルガディスのポーカーフェイスが僅かに崩れたのが、どこか微笑ましい。
 「よかったら、あたしの家にご飯食べに来ませんか?」
 「え、あ・・・ああ」
 意味ありげな瞬きに、ゼルがゴホンとせき払いして表情を改めた。
 ゼルの了承に、アメリアが嬉しそうに微笑んだ。

 

 

 アメリアの部屋は、昨日から『指令室』へと変貌していた。
 さすがに正義のヒーローかぶれというか、形を整えてなりきるタイプというか・・・
 何度か来たことがある部屋だったが、ここまで様変わりするものかと、部屋に入った瞬間は思わず目眩がしてしまったが。
 「昨晩帰った後で燃えちゃって♪」
 嬉しそうにコーヒーを持ってきたアメリアが、壁側にぴったりと、それらしく設えたAV機器の固まりの中心のモニターに張り付いてキーボードを叩いているゼルガディスに手渡した。
 お昼休みにアメリアがミリーナから受け取ったディスクを画面に表示して、中に入っていた情報に目を通していたゼルがため息をつきながらコーヒーに口をつける。
 情報収集をミリーナに頼んでくれると言ったルークは今日は非番でいなかったのだが、さすがにやることは早かった。
 ミリーナもゼルたちがコソコソ何かをやっていたのは知っていたらしく、頼まれた情報を見つけて教えるにも面倒な上の監視を逸らすように、さり気なくアメリアを昼食に誘って何気なく渡された封筒の中にFDディスクが入っていたそうだ。
 いつになく午後の仕事中そわそわしていたのはこれだったのか、と納得した。
 さすがに部署のパソコンでこれを見るわけにはいかない。
 中に入っていた情報も、何も知らない人から見ればさぞかし怪しげで呆れられることだろう。
 「・・・・日本じゃ到底考えられん世界だな・・・」
 「そんなに凄いんですか?」
 興味津々、アメリアもモニターを覗き込む。
 アメリアも多少はパソコンを使えはするのだが、ゼルの方がはるかに詳しい。ミリーナは専門職でやっているので別格だが。
 ミリーナに集めてもらった『触れたものの記憶を読む』という超能力に関する情報。
 ネットにつなぎリンクを辿り、膨大な情報を見ていくと、昨日までは半信半疑・・・どちらかと言うと否定していた『超能力』というものを信じざるを得なくなってきたような気さえする。
 『ルビー・ムーン』がどんなに厳重な、そしてハイテクを駆使した警備でもくぐり抜けて逃げおおせるその秘密の一端がここに示されていた。
 ガウリイの信じがたいお伽話ではなく。
 万が一でもあり得る話、として。
 「・・・『触れたものの記憶を読む』と言っても、色々あるんだな」
 「どれどれ、えーと・・・?」

 

 

 

 超能力・・・神が与えた特種能力。
 しかし科学的な見解・・・『超心理学』と学問的には分類されている研究者の間では、人間誰もが持ち得る力だという意見も中にはある。
 人間の脳は大部分が使われないまま眠り続け、そして老化していくと言われている。
 だが、その眠っている能力が目覚めた時、超能力と呼ばれる力が生まれると言うのだ。それは生まれた時からや事故などで脳に衝撃を受けた時など、超能力者といわれている人にもその原因ははっきりしていないらしいが。
 また、幼い頃は超能力を持っていながら、年を重ねると共にその能力が消えていく人間はかなりの数にのぼるとされる。
 『人間の脳は、宇宙に匹敵する程の謎が秘められている』との科学者の言葉は、おそらく真実なのだろう。

 『触れたものの記憶を読む』という超能力、『サイコメトリー』。
 超常現象の学術分野ではサイ能力と分けられているものの一種。
 物体を手にしたり、触れることで、その物体の由来とかまつわる人々の過去・現代・未来に対する知識を得ることができる能力。
 サイコメトリーの能力者をサイコメトラーやサイコメトリストと呼んでいる。

 

 

 

 「うえっ!?・・・・『死体捜索人』ってなんですかぁ!?」
 モニタを見つめていたアメリアの素頓狂な声にゼルが肩を竦めた。
 「何の証拠もない迷宮入りした事件や行方不明者の捜索なんかで、残された物品に触れて現在の状況を読み取っていく・・・・その延長で死体に行き着いてしまうってわけだな」
 「・・・・なんか嫌ですね」
 「こうやって見ていると・・・向こうの警察は頭が柔らかいんだな」
 カルチャーショックから抜け出したゼルのどこかしみじみとした声に、アメリアがそっと頭を振った。
 「『ルビー・ムーン』がこのサイコメトリストだとして・・・盗んだものから一体何を読み取っていたんでしょうか・・・」
 「ガウリイの話からすると、ヤツは物質だけじゃなく人間の思考も読むって言ってたな」
 人間の思考と、物質からの情報。
 確かにそれらを自由に読めると言うのであれば、どんなに精巧な計画を立てて厳重に情報を管理したとしても筒抜けになってしまうだろう。
 「それもそうですけど。あたし、もっと軽く考えてたんです。人の心を読むって、物質から情報を読み取るって・・・何でも知ることが出来るなんてちょっと楽しそうだなぁって」
 自嘲気味な声にアメリアを振り返ると、彼女は僅かに顔を歪めてじっとモニタを見つめていた。
 「誰だって自分に都合のいい情報だけを知りたいって思いますよね。でも、知りたくないことまで知ってしまう・・・調べなくちゃいけないってこともあるんですね」
 「・・・・そうかもしれない。だがそれは俺たちだって同じだろう?事件が起きれば調査の中でいろんなことを疑っていかなきゃいかん。その中で知りたくないことだって知ってしまうことだってあるしな」
 「そうですけど、でも・・・なんだかやるせません」
 「アメリア・・・」
 正義の申し子。ヒーローおたく。
 そんなあだながつけられる程自他共に認める正義かぶれで、だからこそ悪を許さず正義を広める刑事になったアメリアだが、その心はまだ純粋で、社会の汚濁をよく知らない。
 だからこそ、刑事には向いてない、と思わせてしまう事がある。ちょうど今のように。
 真直ぐで素直すぎるのだ。
 警察というものが完全な正義の味方ではないからこそ、その矛盾をまだ知らない彼女だから。まだ清い心が徐々に汚れていくのがたまらなく惜しまれる。
 綺麗ごとで生きていける程、この世の中は甘くないと充分わかっていても。
 「すみません、頭を切り替えますね。ちょっとご飯の支度をしてきます」
 「ああ、すまない」
 軽く頭を振った後、アメリアが笑顔を浮かべて言い残し隣のキッチンへ向かった。
 ゼルガディスも同じように軽く頭を振り、浮かんだ感傷を振り払い再びモニターへ意識を集中し始めた。
 ルビー・ムーンがサイコメトリストだとひとまず仮定する。
 超能力者の扱える能力というものはそれこそ色々あるということで、人の心を読むというのも事実だとしよう。
 そしてもう1つ。
 ルビー・ムーンのもう1つの超能力。『元あった状態に戻す』という能力。
 これも、ひとまず事実だと仮定しよう。
 ガウリイが一度彼女を捕まえた時に、確かに手にかけたはずの手錠が外れていたという。そしてその手錠からは彼女の指紋が発見されていない。
 ガウリイの言葉を信じて、その能力を認めるならば。その手錠は『使われる前の状態』に戻った・・・戻した、ということになる。
 もしそんなことが本当に可能ならば、最新のハイテク警備網がことごとく機能停止させられていた訳も説明がつく。
 警備プログラムされる前の、ただの機械の状態に戻してしまえば、それはハイテク機械どころかただの鉄の塊だ。侵入も脱出もたやすいだろう。
 確かに泥棒するには最適な能力だ。
 その能力のせいで親に棄てられ、どこかの組織が彼女を引き取った。
 その組織は彼女のその力を使ってルビー・ムーンに何をさせたいんだ?
 偽りの死亡届を提出して彼女の存在を社会から消し、完全に隔離した環境の中で生活させている・・・そこまでして彼女の存在を隠して一体何を企む?
 このサイトにのっている、海外の国のように死体捜索をさせる・・・っていうのは、まずないだろう。そのくらいの事ならそこまで厳重に存在の隠蔽をはかる必要はないはずだ。
 隠すという行為は、後ろ暗いものがあるから。
 公になると立場が悪くなるとわかっているから、隠す。
 ――――立場が悪くなるのは誰だ?
 それだけ厳重な存在の隠蔽をやってのける・・・それだけの権力を持ち合わせている組織。
 その組織が彼女の能力を使って盗みを働かせているのか・・・?
 彼女が今までに盗んだ物。
 巻き物。家の権利書。アンティークドール。CD-ROM・・・一見、全くつながりも共通点もないように見える盗品の数々。
 個別に調べてみたのだが、やはりつながりは見つからない。それ以前に、情報がないのだ。
 狙われた物を所持していた人物たちの関連性も、ゼルが集めた資料に限っていえば特に気になるような所はない。大っぴらに集められる情報ではなかったため、見過ごしているものもある可能性は否定しないが・・・
 「・・・違うな・・・彼女を『ルビー・ムーン』として操っているのは違う組織だ」
 そうだ。ガウリイが言っていた。泥棒なんてやりたくないけれど、でもやると決めたのは彼女自身だと。だからこそ、絶対に捕まるわけにはいかないのだと。
 「・・・・じゃあ・・・彼女を隠している組織は、彼女が『ルビー・ムーン』だということを知らない・・・?」
 どんなに厳重に閉じ込めても意味はない。その能力を使えば彼女はたやすく逃げだせるだろう。
  ・・・?
 ふと、引っ掛かった。
 いつでも逃げだせる状態でありながら、逃げないのは何故だ?
 「ゼルガディスさん。ご飯の用意が出来ましたよ・・・今度は何に悩んでるんですか?」
 「アメリア」
 夕食の支度をしてくれていたアメリアが、ひょいっとゼルガディスの顔を覗き込んだ。正義のヒーローの秘密基地となった部屋の中で、アメリアのエプロン姿が妙に浮いているのが笑えるのだが、本人は全く気がついていないようだ。
 「なあアメリア。ルビー・ムーンは何故逃げないんだと思う?」
 「え?」
 「彼女を引き取ったという組織からも、彼女に盗みを働かさせている組織からも、逃げる気になればいつだって逃げれるはずなのに、何故逃げないんだ・・・?」
 ゼルの問いにアメリアは少しの間悩んで・・・不意にギュッとゼルのシャツを握り締めてきた。
 「アメリア?」
 「・・・・だって・・・逃げて、どこに行けばいいんですか?どこにも帰る場所がないのに・・・」
 小さく震える声にはっとする。
 確かにそうだ。
 戸籍の上ではいないはずの人間。でも、実際には生きている。
 生きてはいるが、何もない。
 家族に棄てられ、家も、自身の証明になるものも何一つない。頼れる物が、何もない。
 彼女は・・・・本当は、まだ少女。
 「・・・それなのにガウリイさんの所に行って・・・でも消えて・・・多分、ガウリイさんの所にずっといたかったと思うのに・・・」
 ポタっと、震えた声と共に溢れ出した涙がゼルガディスのシャツの上に零れ落ちた。
 「・・・・泣くんじゃない」
 「・・・・わかってます。でも・・・」
 「・・・どうにかしてやりたいよな。ガウリイの為にも」
 ゼルのその言葉は、すでに刑事としての言葉ではない。仕事に私情をできるだけ持ち込まないはずの彼の言葉に、俯いていたアメリアは思わず目を見開き、クスっと微笑んだ。
 ごしごしと目許を拭いパンパンっと軽く頬を叩き気合いを入れると、にっこりと笑いながらゼルガディスの腕をとった。
 「ご飯にしましょう。お腹がすいてちゃ戦は出来ぬ!ですからね」
 「まったく。お前の切り替えの早さには恐れ入るよ」
 「正義の味方の基本は笑顔と元気ですから!」
 苦笑しながら立ち上がったゼルガディスがアメリアの頭をわしわしと撫でた。くすぐったそうに逃げるアメリアから死角になる場所でこっそりと深い息をつく。
 ・・・覚悟を決めなきゃいけないな。
 漠然とした不安を感じながらも、この件に関しては俺もアメリアももう引けない。
 きっと無傷ではこの件は乗り切れないだろう。何かを失うかもしれない。それでも事実と真実をこの目で確かめたいと思うから。
 ただ・・・
 「ゼルガディスさん?」
 きょとんとした瞳で見上げてくるアメリアを思いきり引き寄せたい衝動に駆られた。
 自分だけが汚れて傷つくのなら多少の痛みは気にならない。けれど、彼女も同じように汚れて傷つくのを見るのは気が引けるのだ。たとえその感情が傲慢なものであるとしても。
 傷つくのを躊躇わないアメリアだからこそ、出来れば傷つけたくないと願ってしまうのは、惚れた相手に対する男心と言うものだろう。
 「どうかしたんですか?」
 「ん、すまない。ガウリイも厄介な奴に惚れちまったもんだと改めて思ってな」
 再び、今度は心配げに声をかけてきたアメリアに小さく頭を振りさっき感じた衝動を振り払い、誤魔化しのような本心を漏らすと、アメリアが笑った。
 「好きになっちゃったものはしょうがないですよ」
 「まったく、その通りだな」
 アメリアが当然の事のように言い切ったその答えに、俺も笑った。
 好きになったものはしょうがない。
 それは理屈や打算じゃないのだから――――



♪・・・・予定していた場面まで全然たどり着けませんでした。という訳で予定は10話だったのですがもう少しかかりそうですので、もう少しお付き合い下さいませ。m(-_-)m

『サイコメトリ』・・・・最近じゃ、漫画やドラマやドキュメントの番組に名前がよく出てくるようになりました。あの変型版の能力を持っているのがリナです。

次はバトルシーンとリナに泥棒させている例の怪しい人が出てきます♪