あの夏を忘れない


 

 眩しいのはこの灼熱に燃える太陽の陽射しか。
 それとも、その光を受けて輝く、お前の白い肌なのか。
 眩しすぎて目をすがめる。
 幸せな蜃気楼のような揺らめき。
 けれど幻じゃなく、今ここにお前がいる。

 「ガウリィーっっ!」
 リナが手を振る。
 波打ち際で波と戯れ、跳ね上がった飛沫に歓声を響かせながら。
 魔道服でしっかりとガードされていた日焼けを知らない白い肌を、惜し気もなく太陽の元で晒してはしゃいでいる。
 スレンダーな魅惑的な身体を包む白い水着。
 頭上で結わえた長い髪が風に揺れる度に、ほっそりとしたうなじが目にこびりつく。
 白い無邪気な、けれど魅惑的な小悪魔がここにいた。

 夏の陽射しが身体を熱くする。
 開放的な雰囲気が心の枷を取り払う。
 ためらう心すら、この熱が溶かし去っていく。

 「ガウリィ。見てみて。クラゲ見つけたー♪あんたの親戚じゃな・・・!?」
 振り返ったリナの腰を攫って、唇を奪う。
 この陽射しに負けない程の激しさと熱さを込めて。
 暴れていた身体が徐々に力を無くしていく。
 さっき見つけて騒いでいたくらげのようにくたっと、俺に体重を預けて。
 心地よい快楽に意識を漂わせ、ほんのり赤く身体が染まっていくのを薄く開いた目で見ていた。
 覗き込んでいた瞳を閉じて、更に深い口付けを落としていく。
 深い深いキスで、足早に過ぎていく夏を引き止めるかのように。

 「・・・・もっ・・何すんのよ、いきなり・・・・」
 くたっと力の入らない身体を俺にもたれさせながらも、強気な口調は変わらない。
 だけど、俺の背中に回された細い腕が、リナの変化を如実に伝えている。
 甘えるように縋り付く熱い身体。
 触れることをためらわない滑らかな素肌。
 肌と肌が触れる、その心地よさを知ったから。

 「お前が誘ったんだろ?」
 「誘ってないわよ!」
 「俺を呼んだだろ?」

 リナの全てが俺を呼ぶ。
 俺の全てがリナを求める。
 からからに乾いていく。

 夏が終わりかけているビーチ。
 他に人の姿もない、小さな島の浜辺で、ここにいるのは2人だけ。
 まるで、世界中に俺とリナしかいないような。そんな錯角すら与える、静かな空間。
 俺しかいないからだろう?
 そんなにも大胆に肢体を太陽の光に晒しているのは。
 俺の為だろう?
 そんなにも無邪気に笑顔を振りまくのは。

 「ちょっ・・・こらっ!こんなとこで何するのっ!」
 ピクンっと身じろぎした後で、殴りつけられた。
 「誰もいないだろ?」
 「そーゆー問題じゃ・・・んっ」
 逃げる身体を許さずに、むき出しになった肌に唇を寄せて強く吸い付く。
 眩しい程に白い肌に咲く赤い花。
 「やめてってば!」
 「今さら隠すこともないだろ?昨日のだって隠しきれてないんだから」
 「あんたがっ、つけ過ぎるのよっ!」

 ホルダーネックの水着でも隠しきれない赤い花。
 夢ではない、現実の証。
 どんなに刻み付けても足りない。
 そんなもので縛られてくれる程、お前は小さくないから。
 それでも縛り付けたいと思ってしまう。
 せめて、こうやって目に写る場所だけでも俺のものだと知らしめるように。
 「ちょっとぉ・・・・泳ぎにきたんでしょ」
 「もうくらげがいっぱいで刺されるぞ」
 「あんたもくらげでしょーがっっ!」
 

 去年の夏はこんなふうには過ごせなかった。
 こんなに真直ぐにリナを見つめることは出来なかった。
 眩しすぎるリナを見て、自分を押さえる自信がなかったから。
 壊さないように必死で守っていた薄い膜。
 触れて傷つけることさえ恐れていたその膜は、今年の夏、呆気無い程ふわりと破れた。

 「・・・・んぅ・・・ふ・・」
 何度繰り替えしても何度触れても飽きることなく、その度に感動すら受ける柔らかい唇。
 どんな極上の酒よりも、俺を酔わせる甘い舌。
 一度味わってしまったら2度と離れられない。
 あまりにも幸せで、触れていないと不安になる程。
 溺れてるな・・・・頭の隅で自嘲気味な声が聞こえるが、この眩しさの前にすぐに拡散していく。

 「・・・・まったくあんたわ・・・」
 潤んだ瞳で軽く睨み付ける仕種すら愛おしい。
 文句を言いながらも、細い腕で抱きしめてくれる。
 「・・・・・あたしはここにいるでしょ?」
 「・・・・夢じゃないよな」
 「・・・ばかくらげ。寝ぼけるのは寝てからにしなさい」
 まったく子供みたいなんだから・・・・と、微笑むリナは、今までで一番綺麗に見えた。

 追い続けた恋が終わった夏。
 そして、愛が始まった夏。

 「泳ぐわよ、ガウリィ!」
 「ああ。付き合うさ」

 これから2人で過ごす季節が何度と巡っても。
 この夏は忘れないだろう。
 奇跡のような、この夏を―――――――

 


 

♪えーと・・・・バカップル再び(笑)暑さで脳がやられていたようです(^^;)

もう何年も海に泳ぎに行っていません。肌が弱いので海水とあの日射しを浴びた日には、痛くて大変な事になってしまいますし・・・(泣)

実はこれ、『TMN(TM Netwerk)』の“あの夏を忘れない”という曲から書きました♪大好きなんですよ、TMN♪