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「うーん、どうしましょう・・・」
西の空が黄昏色に染まる静かな街並みの中にある小さな宿屋の一室にて。
どこか深刻そうな表情で呟いたのは、肩までの艶やかな黒髪に、大きな群青の瞳をした少女。
少女の名は、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。
「白魔術都市」として知られる、セイルーン王国の第二王女である。
冥王フィブリゾが滅んでから早や数ヶ月。
「仲良し四人組」(byアメリア)こと、リナ=インバース、ガウリイ=ガブリエフ、ゼルガディス=グレイワーズ、そしてアメリアは、魔族との戦いで心身ともに疲れきっていた。
そこで、巷に噂として流れていた、「夕焼けが非常に綺麗な町で休養しよう」ということで、一ヶ月かけてその街にたどり着いた。
夕焼けは噂以上に綺麗で、四人は陽が沈むまでその夕焼けを堪能していた。
そして、そのままその街に数ヶ月休養という形で滞在しているのである。
ところが、その滞在費は、リナの路銀ではなく、すべてアメリアの持ってるセイルーンの印籠で賄っているのである。
この街は、セイルーンに比較的近いため、セイルーンの名前も轟いているばかりか、白魔術も盛んなのだ。
そのため、「この街に滞在している間は、すべてあんたの持ってるセイルーンの印籠で賄ってもらうわよ」というリナの提案・・・もとい脅迫(プラス攻撃呪文のおまけつき)で、泣く泣くアメリアは滞在費および四人分の食費その他諸々の費用をその印籠で賄うことになってしまったのである。
しかし。それにはある問題があった。
「何度かリナさんに印籠返してって言っても、
『な〜に言ってるのよアメリア!仮にもあんたはセイルーンのお姫様なのよ!?
いつ誰かに狙われるとも限らないじゃない。
こういうとき、あたしに印籠預けときゃあんたの身の安全は保障されるのよ?
おまけに宿屋の宿泊費や食費もタダだしね。
あたしたちにとってもあんたにとってもいい話だと思うけど?』
って上手く丸め込まれちゃたし・・・・・・。
かといってこのままずっと印籠使いつづけたら、間違いなく父さんに殺されるし・・・・・・」
アメリアは、ため息混じりにそう呟く。
そうなのだ。
セイルーンの印籠は、アメリアの身分を証明するのはもちろんのこと、セイルーンの財産そのものなのだ。
リナにとって印籠は、「何でもタダになるアイテムよ(はぁと)」だと思っているようだが、アメリアにとっては、印籠はセイルーンのお金を代用しているものに過ぎない。
つまり、借金しているのと同じようなものなのだ。
ここ連日セイルーンの印籠を使いつづければ、当然セイルーンに伝わる。
下手すれば印籠を取り上げられるか、二度と旅が出来なくなるとも限らない。
それは各国に正義を広める責務(本人談)を背負ったアメリアにとって、それは死活問題なのだ。
それだけは絶対に避けなければならない。
「うーん・・・・・・。
リナさんにどこか弱点があれば、そこを突いて印籠取り返せるけど・・・・・・」
そこで言葉を切り、アメリアは『弱点』という単語にしばし考え込み――
ふと突然頭の中にある考えが閃いた。
「よしっ、いいこと考えましたっ!!」
アメリアは勢いよくドアを開けて、闇色に染まろうとしている廊下を駈けぬけた。
「――で・・・・・・
何で俺までこんなことしなければならないんだ?」
アメリアの部屋の中で。
ゼルガディスがそう愚痴をこぼした時には、既に日が暮れ、夜空に月が高く昇っていた。
「何を言ってるんです、ゼルガディスさん!
ゼルガディスさんは、リナさんの弱点が何か知りたくないんですかっ!?
リナさんの弱点を突いて、印籠取り戻さないと、・・・あのリナさんのことだから・・・・・・
あああ〜〜っ、考えただけでも恐ろしい〜〜っ!!(泣)」
頭を抱え込み、その場にうずくまるアメリア。
アメリアのただならない様子に、やる気のなかったゼルガディスもしぶしぶ折れるしかなかった。
「判った判った。もう泣くな。
・・・で、弱点の目星はついたのか?」
「ふふふふふ・・・・・・」
これから起こる出来事をシミュレーションし、なにやら妖しい笑みを浮かべているアメリア。
「ア・・・アメリア・・・?」
ゼルガディスは彼女のこれからやろうとしていることに何やら嫌な予感を感じながら、恐る恐る尋ねる。
「よくぞ聞いてくれましたねっ、ゼルガディスさんっ!!!」
いきなりゼルガディスをびしぃっ!と指さし、アメリアは自信たっぷりに答える。
「お・・・おい、何なんだいきなり!?」
突然アメリアが大声を出したせいで、ゼルガディスはその拍子に思わず尻餅をついてしまった。
そんなゼルガディスの姿に吹き出しそうになるのを必死に堪えながら、アメリアは言葉を続ける。
「実はですねっ!リナさんの弱点について信頼できる人からとっておきの情報をもらってきたんですよっ!!」
「ほう・・・あのリナに弱点か・・・・・・。
だがあいつに弱点なんて見当たらんが・・・・・・。
――まさか、噂の『故郷の姉ちゃん』が弱点なんじゃないだろうな・・・・・・?」
「いいえっ!違いますっ!!
もちろんその『故郷の姉ちゃん』が弱点だってこともこれまでのリナさんの様子で既に立証ずみですっ!!
しかぁぁぁぁぁしっ!!!」
ここで、拳をぎゅっ!と握り締め、バックに炎を燃えたぎらせながら、ここからが本番よっ!、とばかりに熱弁を振るうアメリア。
その様子にゼルガディスもただ呆然とするばかり。
「『故郷の姉ちゃん』以外にももう一つ、弱点があったんですよ、あのリナさんにっ!!
何だと思いますか?」
「・・・・・・?」
『故郷の姉ちゃん』以外にリナの弱点が見当たらず、ゼルガディスは首をかしげる。
「・・・で、なんだ、そのもう一つの弱点というのは?」
「ふふふ、それはですねぇ・・・・・・」
「勿体つけずに早く言え」
「うう・・・ゼルガディスさんの意地悪ぅ・・・・・・(泣)。
・・・・・・リナさんの弱点は・・・・・・」
「な・・・なにーーーっ!?」
ゼルガディスの絶叫が闇色に染まる静かな街中にこだました――――
つづく
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