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好きだって 言ったのに 君は会えない
あの太陽の上へ 雨の上へ
花火の色をとらえれば とらえれば・・・・・。
静かな時間へ 包まれるように
助けてちょうだい ちょうだい
――――雨の上へ――――
街中が浮き足立っている気配が離れていても伝わってくる。
陽気な音楽と歓声。
茜色に染まった空は暮れかけているが、祭りはまだ始まったばかりといったかんじだ。近付くにつれて熱気が伝わってくる。
黄昏色の空気が辺りを支配し始めた。
そして俺は、「リナがいるかもしれない」街へと足を踏み入れた。
「すごいな・・・。」
思わず圧倒される。
真っ赤な軍服を身につけた楽隊が通りを埋め、色とりどりのきらびやかな衣装を
纏った踊り子が自分たちの舞いを披露している。
「一体何の祭りだ?」
近くにいた男に声をかけた。
「ああ、スィーフィード様を讃える祭りさ。3日後の最終日には『赤眼の魔王』との戦いを表現した踊りもあるんだ。なんだ・・・?あんた、この街のモンじゃないな。」
「ああ。」
「なんだい?祭り目当てできたようじゃないな。・・・ずいぶん物騒なモン下げてるし。」
男は俺の剣をちらっと見やる。
「人を・・・探してる」
「は!なんだ、これかい?」
冷やかしたように小指を立てる。
「・・・・そんなモンかな。」
「そうか。ま、せいぜいがんばんな。俺はそこで飲み屋と宿をやってるんだ。なんか困ったら来るといいさ。手伝えることなら手伝ってやるよ。」
「ああ・・・」
「なんだ?そんなシケた顔(つら)してんな。今日ぐらい楽しむといいさ。じゃあな。」
言ってその男は、雑踏の中へと紛れて行った。
「そうもいかないさ。早く・・・会いたいもんでね。」
小さく呟いて、俺は人混みを離れた。
「やぁっ!やめて!」
表通りから一本入った暗い路地を歩いているとき、女の声が聞こえた。
さっきから霧のような小雨が降り始めている。それでも祭りの喧噪は止まない。
「へへへ。大人しくしろや、お嬢ちゃん」
「いくら腕が立つとは言え男三人相手じゃあそうもいかんだろう。」
いやらしい響きの男の声。
「うくぅっ!離せぇ〜〜!!」
随分と気の強いお嬢さんのようだ。普通なら怯えて声も出ないと思うが・・・。
まあ、それはいいとして。
「婦女暴行とは感心できんなぁ。祭りの日くらいは大人しくしてたらどうだ?」
「だっ、誰だ!?」
「名乗るほどの者でもないさ。ところでおっさん。その汚い手、離してやったらどうだ?そうすりゃあ命くらいは助けてやるぜ?」
「う、うるせぇっ!カンケーねぇだろうが。おい、やっちまえ!」
『おう!!』
・・・・悪党だ。まったく変わりばえのしないセリフ。
昔は、リナと二人でこの言葉を何度も聞いた。
「もっとセンス磨けよ、オイ・・・。」
呟きながらも俺は3人を、当たり前のことだがあっさりとぶちのめした。
「おい、大丈夫か?」
声をかけると女はビクリと震えた。
「・・・・・。」
「何もしやしねぇよ、安心しな。」
「・・・・はい。あの、助けてくださって、ありがとうございました。」
「あーいいって。それよりあんた、いくら祭りの日だって言っても女の子の一人歩きは危険だぜ?送ってやるよ。」
「・・・ありがとうございます。」
彼女が、顔を上げた。
「っ!?」
霧のような粒子の細かい雨の降る中、花火が、一発上がった。闇に光を灯したそれは、彼女の少し幼い顔を照らし出した。
「リナ・・・・。」
「え?」
変わっては・・・いる。格好はもちろん見慣れた魔道師姿ではなく、普通の町娘のもの。髪もずいぶん伸びているし、少し乱れてはいるが二つに編んである。
・・・・胸も、少し成長したような・・・。
でも、変わっていない。その透けるように白い肌と、真紅の瞳は―――
「リナ・・・。」
「あなたは」
不思議そうな瞳で俺のことを見つめる。が、俺はそんなことは一切無視してリナを抱きしめた。
「きゃっ・・・ちょっと、なにすんの・・・んっ。」
俺は夢中でにリナの唇を塞いだ。
「はぁ・・・う」
唇から洩れた甘い声に、俺の理性は完全にふっとんだ。
その後、自分が一体何をしたのか、憶えていない。
腕の中で、リナの激しい抵抗を感じながら、俺はリナを抱いた。
俺を正気に戻したのは、リナの泣き声だった。
「リナ・・・・・?」
「・・・あなたは・・・誰・・・?」
その言葉に、俺は愕然とした。
『アナタハダレ?』
呆然とする俺の横で、リナは服を身につけ乱れた髪をほどくと立ち上がった。
「・・・助けてくださって・・・ありがとうございました・・・。」
機械的に告げると、スカートをひるがえして駆けていった。
「リナじゃ・・・ない・・・・?」
あの太陽の上へ 雨の上へ
「そんな・・・見間違えるはず・・ないだろう・・・?あの瞳を・・・リナを・・・・。」
呟きは、虚しく闇に響いた。
あの太陽の上へ 雨の上へ
花火の色をとらえれば とらえて!! とらえれば・・・・・。
小さな叫びも 聞き取れるように
助けてちょうだい ちょうだい
せめてひととき 私に ちょうだい ちょうだい
――――雨の上へ――――
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