呪い 

第3章〜『66db』〜  

 


 

好きだって 言ったのに 君は会えない       

       あの太陽の上へ 雨の上へ
       花火の色をとらえれば とらえれば・・・・・。
       静かな時間へ 包まれるように
       助けてちょうだい ちょうだい
       ――――雨の上へ――――

 街中が浮き足立っている気配が離れていても伝わってくる。
 陽気な音楽と歓声。
 茜色に染まった空は暮れかけているが、祭りはまだ始まったばかりといったかんじだ。近付くにつれて熱気が伝わってくる。
 黄昏色の空気が辺りを支配し始めた。
 そして俺は、「リナがいるかもしれない」街へと足を踏み入れた。
 「すごいな・・・。」
 思わず圧倒される。
 真っ赤な軍服を身につけた楽隊が通りを埋め、色とりどりのきらびやかな衣装を
纏った踊り子が自分たちの舞いを披露している。
 「一体何の祭りだ?」
 近くにいた男に声をかけた。
 「ああ、スィーフィード様を讃える祭りさ。3日後の最終日には『赤眼の魔王』との戦いを表現した踊りもあるんだ。なんだ・・・?あんた、この街のモンじゃないな。」
 「ああ。」
 「なんだい?祭り目当てできたようじゃないな。・・・ずいぶん物騒なモン下げてるし。」
 男は俺の剣をちらっと見やる。
 「人を・・・探してる」
 「は!なんだ、これかい?」
 冷やかしたように小指を立てる。
 「・・・・そんなモンかな。」
 「そうか。ま、せいぜいがんばんな。俺はそこで飲み屋と宿をやってるんだ。なんか困ったら来るといいさ。手伝えることなら手伝ってやるよ。」
 「ああ・・・」
 「なんだ?そんなシケた顔(つら)してんな。今日ぐらい楽しむといいさ。じゃあな。」
 言ってその男は、雑踏の中へと紛れて行った。
 「そうもいかないさ。早く・・・会いたいもんでね。」
 小さく呟いて、俺は人混みを離れた。

 

 

 「やぁっ!やめて!」
 表通りから一本入った暗い路地を歩いているとき、女の声が聞こえた。
 さっきから霧のような小雨が降り始めている。それでも祭りの喧噪は止まない。
 「へへへ。大人しくしろや、お嬢ちゃん」
 「いくら腕が立つとは言え男三人相手じゃあそうもいかんだろう。」
 いやらしい響きの男の声。
 「うくぅっ!離せぇ〜〜!!」
 随分と気の強いお嬢さんのようだ。普通なら怯えて声も出ないと思うが・・・。
 まあ、それはいいとして。
 「婦女暴行とは感心できんなぁ。祭りの日くらいは大人しくしてたらどうだ?」
 「だっ、誰だ!?」
 「名乗るほどの者でもないさ。ところでおっさん。その汚い手、離してやったらどうだ?そうすりゃあ命くらいは助けてやるぜ?」
 「う、うるせぇっ!カンケーねぇだろうが。おい、やっちまえ!」
 『おう!!』
 ・・・・悪党だ。まったく変わりばえのしないセリフ。
 昔は、リナと二人でこの言葉を何度も聞いた。
 「もっとセンス磨けよ、オイ・・・。」
 呟きながらも俺は3人を、当たり前のことだがあっさりとぶちのめした。
 「おい、大丈夫か?」
 声をかけると女はビクリと震えた。
 「・・・・・。」
 「何もしやしねぇよ、安心しな。」
 「・・・・はい。あの、助けてくださって、ありがとうございました。」
 「あーいいって。それよりあんた、いくら祭りの日だって言っても女の子の一人歩きは危険だぜ?送ってやるよ。」
 「・・・ありがとうございます。」
 彼女が、顔を上げた。
 「っ!?」
 霧のような粒子の細かい雨の降る中、花火が、一発上がった。闇に光を灯したそれは、彼女の少し幼い顔を照らし出した。
 「リナ・・・・。」
 「え?」
 変わっては・・・いる。格好はもちろん見慣れた魔道師姿ではなく、普通の町娘のもの。髪もずいぶん伸びているし、少し乱れてはいるが二つに編んである。
 ・・・・胸も、少し成長したような・・・。
 でも、変わっていない。その透けるように白い肌と、真紅の瞳は―――
 「リナ・・・。」
 「あなたは」
 不思議そうな瞳で俺のことを見つめる。が、俺はそんなことは一切無視してリナを抱きしめた。
 「きゃっ・・・ちょっと、なにすんの・・・んっ。」
 俺は夢中でにリナの唇を塞いだ。
 「はぁ・・・う」
 唇から洩れた甘い声に、俺の理性は完全にふっとんだ。

 その後、自分が一体何をしたのか、憶えていない。
 腕の中で、リナの激しい抵抗を感じながら、俺はリナを抱いた。
 俺を正気に戻したのは、リナの泣き声だった。
 「リナ・・・・・?」
 「・・・あなたは・・・誰・・・?」
 その言葉に、俺は愕然とした。
 『アナタハダレ?』
 呆然とする俺の横で、リナは服を身につけ乱れた髪をほどくと立ち上がった。
 「・・・助けてくださって・・・ありがとうございました・・・。」
 機械的に告げると、スカートをひるがえして駆けていった。
 「リナじゃ・・・ない・・・・?」 

 

             あの太陽の上へ 雨の上へ

 

 

 「そんな・・・見間違えるはず・・ないだろう・・・?あの瞳を・・・リナを・・・・。」
 呟きは、虚しく闇に響いた。

 

 

あの太陽の上へ 雨の上へ
花火の色をとらえれば とらえて!! とらえれば・・・・・。
小さな叫びも 聞き取れるように
助けてちょうだい ちょうだい       
せめてひととき 私に ちょうだい ちょうだい
――――雨の上へ――――

 

 


 


♪お待たせしましたっ!!逸樹さまから第三章を頂きました♪

んがっっ!!・・・ガウリイの不幸度が上がってます・・・・(T_T)せっかくリナに会えたのに、我を忘れて抱いちゃったのに〜〜〜(泣)

リナの記憶・・・戻りますよね?・・・ハラハラしながら続きを見守らせていただきますっっ!!