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「待ちなさいっ、ゼロスっ!」
とある街で、例のごとく例のように、リナたちはゼロスに出会った。
「今度は誰のご命令かしら?」
冷ややかに言い放つリナを、ゼロスが嘲るように笑った。
「いやだなぁ、リナさん。僕だって誰にでもヘコヘコしてるわけじゃないですよ。
あくまでも、我が主のために動いてるんですから。」
「グレーターピースト、ね?」
「ま、そんなとこです。」
やれやれといった風に、手を上げる。
「何の用?あたしたち、当分仕事はしないつもりなの、悪いけど。」
「・・・そうもいかないですよ。今回の指令は、リナさんの『抹殺』ですからね。」
「なっ!?」
思ってもみなかった言葉に、驚愕する。
「なんだとぉっ!」
が、ガウリイの方ががいっそう驚いて叫んでいた。
「どーゆーこと?」
リナがガウリイを制して静かに問う。
「いやぁ、選択肢がないってわけじゃないんですよ?
貴女が、ガウリイさんを捨てて僕たちのもとに下るなら、話は別です。」
「・・・・。」
短い沈黙。
「・・・イヤだって、言ったら?」
「そうですねぇ・・・」
しばし考え込むゼロス。
「できれば、魔族側(こちら)としても人員不足ですからね、来ていただきたいですし・・・。最終手段を使わせていただきます♪」
ぱちんと、ゼロスが指を鳴らすと、一人の少女が現れた。
「ア、アリアっ!?」
そう――――
ゼロスが抱えている少女は、リナたちの知っている顔。
先日、ちょっとした事件で関わった少女だった。
「おや?お知り合いですか?」
「あんた・・・知ってたわね?」
おどけるゼロスの口調に、リナの怒気が増す。
「・・・だったら・・・どうします?」
「ガウリイ、殺っていいわよ・・・。あたしも、本気で、いく。」
「おうっ!」
「簡単には捕まりませんよ?」
言って逃げるゼロスを、二人は追い始めた。
「アリアを、離しなさい。」
街からかなり外れた場所にある崖。
その縁に、ゼロスはアリアを抱えて立っていた。
「その前に、リナさんの答えを聞かせていただきませんと・・・。」
「それは後よっ!離しなさいっ!!」
怒りで、声が震えている。
「まったく、せっかちさんですね。ほら」
「なっ!?」
ゼロスは、アリアを離した。崖の下に。
「アリアっっ!」
叫んでリナがダッシュをかける。
「増幅版!レイ・ウィングっ!」
「リナ、待てっ!」
ガウリイがリナを止める。そう、彼女は今、魔法が使えない。
仕事をしない理由の一つは、それだった。
が、間に合わない。
「くっ!」
―アリアが落ちるのが速いか、あたしの術が速いか――
そしてリナは、崖の中程でアリアをキャッチした。
「リナっ、気をつけろ!」
上の方まで上がってきたとき、ゼロスが面白くなさそうな表情でリナを見つめ、何かの呪文を唱えた。
「へ?」
リナの体が、急に軽くなる。
「きゃぁっ!」
術が、解けたのだ。
落ちる直前に、アリアを投げ出す。
が、今度はリナ自身が落ち、縁にぶら下がる形になってしまった。
「リナっ!」
ガウリイが駆け寄って、引き上げようとする。
「くっ!」
「いい格好ですねぇ、リナさん?」
ゼロスがあざ笑う。
「ゼロスっ!」
「どうです?気は変わりましたか?」
「っ!誰がっ!」
「じゃあ、ずっとそうしててください。ガウリイさんの力が尽きるまでですけど。」
ガウリイの腕からは、鮮血が流れていた。
仕事を引き受けなかった理由の二つ目。ガウリイの怪我が完治していなかったのだ。
「ガウリイっ、離しなさいっ!あんたまで、落ちるわよっ!!」
「誰が・・・離すかよっ!!」
言いながら、二人は少しずつ、しかし確実にずり落ちてきていた。
「ガウリイっ、離して!あんたが死んでどうすんのっ!」
「イヤだっ・・・・リナがいないなら・・・」
「離しなさい、ガウリイ。」
静かに言って、リナが腰の剣を抜いた。
「リナ!?」
「そして」
しゃっ
「あぐっ!」
激痛に、思わず手を離してしまった。
「リ、リナぁぁぁっ!!」
リナは、そのまま崖の下へと落ちていった。
「あ〜あ。ガウリイさん、やっちゃいましたねぇ?」
可笑しそうに言うゼロス。
「もとは、お前のせいだろうが。」
怒りを通り越して、空虚になる。
「 ま、下は河ですから。死んだとは限りませんよ?それより、ほら。アリアちゃんを街に連れていった方がいいですよ?僕の魔力が強すぎたみたいですね。ほっと
いたら大変なことになりますよ?」
言って、ゼロスは消えた。
「リナは・・・死んでない。言ったんだ、最後に。『あたしをみつけて』って。」
ゆっくり立ち上がると、アリアを抱えて街の方へと歩いていった。
その姿を見ながら、消えたはずのゼロスが微笑む。
「まったく、リナさんににはしてやられましたよ。
まさかあんな時に『呪い』をかけたんですからね、自分自身に。
ガウリイさんのことを想いながら死ぬのがイヤだったのか、生きながらえたらガウリイさんがいない生活がイヤだったのか・・・。
ま、どちらにしてもあまりうれしくない感情ですよ。まったく。探しようがなく
なっちゃったじゃないですか。もう。」
呟いて、今度は本当にゼロスは消えたのだった。
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