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夢を、見た。
真っ赤な夕焼けが、不敵に微笑む夢――――
あれだけ探したにもかかわらず、出会いはまったくの偶然で。
そもそも夕焼けのイメージしかなかったのだから、人に聞くことも出来なくて。
新しくなったカフェテリアにやってきて、テキトーに座って。もちろん、栗色の髪の少女が居たのは気づいてたけれど、まさか『彼女』だとは思わなかった。
少女から向けられた視線に、またか、とうんざりしつつも、なぜかそうしなければならないような気がして、視線を少女に移した。
――――夢が、蘇る。
まさか、こんなに近くに居たなんて。
オレの視線を、逸らすことなく受けとめる深紅の瞳。燃えるような、夕焼けの色―――
ゆっくりと立ち上がり、少女に向かう。視線は外れない。外さない。
少女の目の前で足を止め、テーブルに手をつく。ゆっくりと顔を近づけても、なぜか少女は逃げずにオレを受け止めた。
確信して、『彼女』をそこから連れ出す。二人だけで、話がしたかった。
「よろしくしてあげるわ、ガウリイ」
そう言って不敵に笑う、赤い瞳。やっと見つけた、オレだけの光。
手の甲にキスをして抱きしめたら、真っ赤になって暴れ始める。さっきは平然としてたのに、変なやつ。でも、可愛い。
「あたしはぬいぐるみじゃないんだからっ!」
「誰も思ってないって、そんなこと」
照れ隠しだろうか、未だ暴れる彼女の耳元で囁いてやる。さっきの反応を見てると、どうやら耳が弱いらしい。(にやり)
「ぅにゃっ……」
猫のようにうめいて身をすくませる。くすり、と笑って、腕を放す。
「さて、と……あそこには戻れなくなっちまったなぁ」
にこにことしながら言ったオレに、呆れた視線が返ってくる。
「あんたが、あんなことするからでしょうが。どうしてくれんのよ、カフェオレまだ残ってたのに」
その言葉に苦笑する。おいおい、色気より食い気か?
「わかったよ」
小さな手をとって、来た道とは別の道に向かう。
「どこ行くの?」
「カフェオレが飲みたいんだろ? お勧めの喫茶店があるから、そこに行こう。奢ってやるから」
一瞬きょとんとした彼女が、にっこりと笑った。
「よく食べるな〜……おまえさん……」
メニューのケーキやらパフェやらを完全制覇した彼女に、呆れを通り越して感心する。この細い身体に、よくもあれだけ入るもんだ。
「だって、奢ってくれるって言うからさ」
さっきの笑顔の意味を今さら悟るが、悪戯っぽく笑うその笑顔を見ると、まぁいいか、なんて思ってしまう。
「……しかし……オレ、夢を見たとき、つまり半年前から探してたんだが……同じ大学内で、何で見つからなかったんだろうな?」
当然の疑問に、
「だってあたし、半年前からアメリカに留学してたもん」
あっけらかんと答えが返ってくる。
そりゃ見つからないわけだ。
じゃあ、さっきキスしても平然としてたのも、そういうわけで……あ、なんか腹立つな……
「ま、それでも会えたんだから……」
「運命だ、って言いたいの?」
見上げてくる紅い瞳に、ちらりと不機嫌な光が灯った。
「不満か?」
「運命だからあたしを好きになったんだったら、お断りするわよ。
言い換えれば、『運命の相手』だと思える人なら、誰でもいいってことでしょう。あたしじゃなくても、良い訳よね」
「めちゃな論理だな―……それ……」
「やかまし」
オレの目の前に、ぴっと指を突きつける。
ひとを指差すなよ……
「あたしは運命とやらに従うつもりはないからね」
そう言って、不敵に笑う少女。
それに笑い返して、目の前の小さな手を引き寄せる。軽く唇を重ねて。
「解ってる、これはオレの意思だ。
好きだよ、リナ」
Fin
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